ライ麦
Share
そばが痩せた土地で育つ理由を、根のはたらきから書いてきました。
同じように、痩せた土地に強い作物は、ほかにもあります。
ヨーロッパのライ麦です。
ライ麦は、小麦が育ちにくい冷涼な土地や、砂地・酸性土壌でも育つ作物として知られています。
現在も、ドイツからポーランド、ロシアにかけての北寄りの地域が、おもな産地になっています。
寒さが厳しく、土地も痩せた地域で、小麦の代わりに栽培されてきました。
「人を飢えから守る麦」と呼ばれてきた背景には、こうした土地への強さがあります。
そばとライ麦は、痩せた土地への対応の仕方が違います。
そばは、土のなかに固定されたリン酸を、化学的に溶かして使える形に変えます。
ライ麦は、根そのものを広く深く伸ばし、養分を探す範囲を広げる方向で対応しています。
1937年に発表された研究では、箱のなかで一本のライ麦を育て、その根と根毛を調べました。
根毛まで含めた総延長は、一万キロメートルを超えたと報告されています。
一本の苗が、限られた土のなかでそれだけの網の目を広げているということです。
酸性の土壌でも、対応の仕方は違います。
酸性土壌では、アルミニウムが溶け出し、根にとって害になります。
そばは、根からシュウ酸を出してアルミニウムの害を抑えます。
ライ麦は、根からリンゴ酸を放出することで、同じようにアルミニウムの害を抑えます。
放出する有機酸の種類は違っても、それによってアルミニウムの害を抑えるという方向は共通しています。
そばもライ麦も、痩せた土地で育つ作物です。
けれど、同じ環境に強いからといって、同じ方法で生きているわけではありません。
痩せた土地で育つという同じ結果の下に、それぞれ違った根の戦略があります。