ハリナシバチ

ハリナシバチ

熱帯や亜熱帯には、針を持たない蜂の仲間がいます。
ハリナシバチと呼び、針そのものが退化していて刺すことができません。
体長は数ミリから2センチほどと種によって様々で、世界に500種以上が知られ、中南米だけでなく東南アジアやアフリカにも広く分布しています。

この小ささが、思いがけないところで役立っています。
チョコレートの原料になるカカオの花は、直径1センチほどしかなく、花びらが小さなフードのように雄しべを覆っていて、大きな虫は中に入れません。
これまでは、ごく小さなユスリカの仲間が主な受粉役とされてきましたが、近年の研究では、体長4ミリに満たないハリナシバチの一種も、花の中に入り込んで花粉を運んでいることが分かってきました。
オーストラリアでは、マカダミアの木と在来のハリナシバチが共に進化してきたとされ、今も重要な受粉相手になっています。
体の小ささが、大きな蜂には難しい花との関係を築いてきたようです。

巣の作りもミツバチとは異なります。
六角形の巣房を蜜蝋で組むミツバチに対し、ハリナシバチは木のうろや岩の隙間に、壺のような小部屋を並べます。
壺の材料には樹脂が混ぜ込まれ、蜜が熟成する間にプロポリスの成分が少しずつ溶け込みます。
できあがる蜂蜜は水分量が多く、酸味を感じるものが多く、結晶化もしにくいのが特徴です。
水分が多い分、発酵も進みやすく、ミツバチの蜂蜜ほど日持ちしないとされています。
プロポリスに抗菌性があっても、それだけで発酵を防ぎきれるわけではなく、採取後に水分を飛ばしたり、低温で保存したりする工夫がされています。

新しいコロニーの作り方も、ミツバチとは逆になります。
ミツバチは慣れた古い女王が群れを連れて巣を出て、若い女王が元の巣に残ります。
ハリナシバチは、若い女王の方が働き蜂とともに巣を出て、新しい巣を作ります。

一群が集める蜜の量は、ミツバチの年間20キログラムほどに対し、ハリナシバチは種によって1〜5キログラム程度にとどまり、希少さに見合うだけ価格も高くなる傾向があるようです。

メキシコのユカタン半島には、シュナンカブという種を丸太の巣箱「ホボン」で飼う伝統があり、マヤの人々の間で3000年ほど続いてきました。
針を持たないため、家の庭先でも世話ができ、伝統の担い手には女性が多いといいます。
様々な理由で森林が減るなか、蜂は全体として減少傾向にあるとされていますが、古い大木のうろという特定の環境を必要とするハリナシバチは、その影響を受けやすい立場にあるようです。

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