芯粉という部位
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そばの色には、違いがあります。
白に近いものから、緑がかった灰色、濃い茶色まで、店や商品によって幅があります。
同じ「そば」と呼ばれていても、見た目はひと通りではありません。
「普通そば」に限ってみれば、色の違いの多くは、使われている粉の部位の違いから来ています。
そばの実は、外側に殻があり、内側に複数の層があります。
中心部は柔らかく、外側ほど硬くなります。
殻を除いて挽くと、中心に近い部分から先に粉になって出てきます。
最初に出る粉を「一番粉」または「内層粉」と呼びます。
さらに製粉が進むと、二番粉、三番粉、表層粉と、外側に近い部分の粉が出てきます。
中心の粉だけで打つと、麺は白くなり、口当たりは軽く、雑味が少なくなります。
噛んだときの歯切れも、はっきり出ます。
更科そばと呼ばれてきたものは、この中心の粉を使ったそばです。
外側の粉を含むほど、色が濃くなり、香りが強くなります。
殻を除いた実をすべて挽き込んだものは「挽きぐるみ」と呼ばれます。
田舎そばは、外側の粉を多く含む方向のそばです。
これらは、品種ではなく、部位の選び方を指す名前です。
品種としては、「普通そば」のほかにダッタンそばがあり、こちらは別の軸の話になります。
同じ「そば」のなかに、部位の選び方と、品種の違いが、両方含まれています。
同じような構造が、日本酒にもあります。
精米歩合という数値で示されます。
七十パーセント、五十パーセント、四十パーセント。
玄米のうち、外側をどれだけ削ったかを表す数字です。
削るほど、雑味が減り、洗練された風味になるとされてきました。
一方で、あまり削らずに、外側を残した酒もあります。
そばと米では、原料の扱い方が違います。
米は粒のまま発酵・醸造されて酒になり、そばは製粉してそのまま麺になります。
原料を別のものに変える米と、原料そのものを食すそば。
中心を取り出す方法も、それぞれに合わせて別の形です。
米は粒の外側を削り、そばは挽くと中心が先に粉になって出てきます。
表示の仕方も違います。
日本酒では精米歩合が数値で書かれ、そばでは「更科」や「田舎」といった呼び名で示されることが多い。
磨きの軸だけでみれば、中心を残す方向と、外側まで残す方向の、二つがあります。
取り出し方や見せ方が違っても、向き合い方は近い形を持っています。
原料の中でどこを使うか。
その選択が、できあがるものの色と味を決めています。