水分と羽ばたき
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花から集めた蜜は、巣房に入れられた段階ではまだ蜂蜜ではありません。
水分が多く、薄い糖液の状態です。
蜂はここから水分を飛ばす作業に入ります。
蜂は巣の中で羽を動かして風を送ります。
多くの働き蜂が同時に行い、巣房の中の水分が少しずつ蒸発していきます。
巣箱の中の温度と換気が、その速さに影響します。
水分を飛ばす理由は一つではありません。
ひとつは発酵の防止です。
蜜にはもともと酵母が含まれており、水分が多い状態では活性化して発酵が始まります。
水分含有量がおよそ20パーセントを下回ると、その活動が抑えられます。
もうひとつはエネルギー密度の向上です。
蜂にとって蜂蜜は越冬のための燃料です。
薄い糖液のまま蓄えると、同じ体積の巣房に入るエネルギーが少なくなります。
水分を飛ばして濃縮することで、限られたスペースに多くのエネルギーを蓄えられます。
粘度も変わります。
水分が多いままでは蜜がさらさらで、封蓋前に巣房から流れ出します。
水分が下がることで適切な粘度になり、巣房の中に留まりやすくなります。
これらは蜂が越冬するための条件ですが、人間の側からも同じことが言えます。
発酵しにくく、エネルギーが凝縮されていて、粘度があって扱いやすい。
蜂が自分たちのために整えた状態が、そのまま流通に乗る形になっています。
一方、蜂蜜に水を加えて意図的に発酵させると、醸造酒になります。
ミードと呼ばれ、世界各地に製法があります。
蜂が時間をかけて飛ばした水分を、人間がまた加えて発酵させる。
同じ蜜が、水分量によって別のものになります。