呼び名の発想

呼び名の発想

そばという名前が、実の角にちなんでいるという話を、前回書きました。
同じように、実の形にちなんだ呼び名は、ほかの言語にもあるとされています。

そばは、ユーラシア大陸の広い範囲で栽培されてきました。
中国、朝鮮半島、ヨーロッパと、それぞれ独立した地域に、同じ実が渡っていきました。
土地が離れているぶん、名づけの仕方も、それぞれの土地で別々に考えられてきたことになります。

米や小麦、大麦の実は、比較的丸みを帯びた形をしています。
そのなかで、そばの実だけが角ばった三角形をしているため、ほかの穀物と並べたときに、形そのものが目についたのだと考えられます。

中国語では、そばを「荞麦(チャオマイ)」と呼び、尖った麦を意味するという説明があります。
「三角麦」という、形をそのまま表した別名もあります。
韓国語では「メミル」と呼ばれ、山の形をした小麦を意味するとされています。
どちらも、実の形そのものを言葉にした呼び名です。

ヨーロッパでは、違う発想で名づけられています。
英語の「buckwheat」は、中期オランダ語の「boecweite(ブナの小麦)」に由来します。
ブナの木の実は、殻に包まれた小さな三角形をしていて、そばの実の形と重なります。
学名の「Fagopyrum」も、ラテン語でブナを意味する「Fagus」と、小麦を意味する「Pyrum」を組み合わせたものです。
形を直接言葉にするのではなく、身近にあった別のものに重ねて名づけています。

一方、タイでは事情が違います。
そばは、タイで長く栽培されてきた作物ではなく、後から健康食品として入ってきたものです。
そのため、呼び名も一から作られず、英語の「buckwheat」をそのまま音にした言葉が使われています。
土地との付き合いが浅ければ、名前も、よそから借りてくることになります。

直接形にちなんで呼ぶか、身近なものに重ねて呼ぶか、よそから借りてくるか。
同じそばでも、その土地との付き合いの長さや形によって、名づけ方が分かれています。

Back to blog