湯のなかで

湯のなかで

そばを茹でるとき、湯は多めに用意します。
鍋にたっぷりの水を沸かし、沸騰している中にそばを入れる。
そばが湯のなかで踊るくらい、湯量がいると言われます。

湯が少ないと、麺を入れたとたんに温度が下がり、すぐには戻りません。
温度が下がっているあいだに、麺どうしがくっつきやすくなります。
湯のなかに溶け出した成分も濃くなり、麺の表面に残りやすい。
そばが少ない湯のなかで茹でられると、食感も味も整いません。

茹で時間は、配合と状態で大きく変わります。
小麦粉を加えたそばは、湯のなかで麺がしっかりしているので、長めに茹でられます。
干しそばで三分から五分、生のそばで一分から二分ほどが、よく示される目安です。
十割そばは粘りがなく繊細で、生のまま茹でるなら一分前後と短い。
ただし、干しそばに仕上げた十割は、麺の内部に水分を戻す時間が必要になり、六、七分ほどかかります。
短すぎると芯が残り、長すぎると麺が伸びて、香りも飛びます。
麺が湯の表面に浮かんでくる、透明感が増す。
こうした変化を見て、茹で上がりを判断します。

茹で上がったそばは、冷水で締めます。
ザルにあげて、すぐ冷たい水で洗い、もう一度、より冷たい水でしっかり冷やす。
冷やすことで、表面のぬめりが取れ、弾力が引き立ちます。
温かいそばとして食べる場合も、いったん冷水で締めてから、温め直す手順を踏みます。

そば粉だけで打ったそばは、茹でるときに切れやすい性質があります。
強くかき混ぜず、箸でほぐすときも、上下にやさしく動かす程度にとどめます。
茹で終わりに火を止めて、フタをしたまま蒸らす方法もあります。
湯のなかで強く混ぜずに、麺の内部までゆっくり火を通す手順です。

茹でるという工程は、麺を食べられる状態に変える、最後の段階です。
製粉、製麺、乾燥を経たそばも、茹でて、冷やして、ようやく口に届きます。
時間にすればわずか数分のあいだに、麺の状態が大きく動きます。

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