小麦粉という知恵
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そばのつなぎといえば、小麦粉を思い浮かべることが多いと思います。
けれど、つなぎはそれだけではありません。
地方によっては、ふのり(海藻)を使うところがあります。
山芋を使うところも、卵を使うところもあります。
米粉を加えるやり方もあります。
それぞれが、その土地で手に入る素材を、粘りに変える方法として残ってきました。
つなぎが必要だったのは、そば粉そのものに粘りが少ないからです。
こねても、生地として一つにまとまりにくい。
そのままでは、麺の長さや細さを安定させにくいのです。
ただ、これらはどれも、その土地で打って、すぐに食べるそばのための工夫でした。
打ったものを乾かして保存したり、遠くへ運ぶことには向いていません。
水分が多い状態でこそ、粘りとして働く素材だからです。
その中で、小麦粉が広く使われるようになりました。
乾いた粉のまま運べる、長く保存できる、生地に混ぜるだけで粘りになる、地域を問わず手に入る。
店で安定して出すうえでも、干しそばとして遠くへ運ぶうえでも、こうした条件がそろっていたのだと思います。
ほかのつなぎが消えたわけではありません。
今もふのりを使う土地があり、山芋を使う店があります。
流通の中心には小麦粉が残り、土地には別のつなぎが残った、という分かれ方をしてきました。
素材そのものを変えるのではなく、別の素材を加えて、扱える状態にしていく。
その加え方は一つではなく、土地ごとに違うかたちがあった。
広まったやり方と、土地に残ったやり方。
両方が、そばのつなぎとして受け継がれてきました。