受粉のしかた

受粉のしかた

そばの畑では、花が咲くと、蜂やハエ、アブが集まります。
虫たちは蜜を集めながら、体に花粉をつけて、別の花へと移ります。
この動きの中で、受粉が起きています。
普通の植物と同じに見える光景ですが、そばの花には、ほかの作物には少ない仕組みがあります。

「普通そば」は、自分の花粉では実をつけません。
別の株の花粉が雌しべに届かないと、受粉が成立しない仕組みです。
さらに、「普通そば」の花には、雌しべが長いものと短いものの二つのかたちがあります。
同じかたちの花どうしでは受粉せず、違うかたちの花のあいだでだけ、受粉が成立します。
近くの花でも、同じ株では駄目で、しかも違うかたちの花を選ぶ必要がある。
自分で受粉することを、何重にも避ける構造になっています。

この仕組みは、遺伝的な多様性を保つためのものだと考えられています。
自家受粉だと、親と同じ遺伝子の組み合わせの子孫ができやすく、多様性が下がります。
別の株と受粉することで、異なる遺伝子が混ざり、多様な子孫が生まれる。
環境が変わったり、病気が広がったりしたとき、生き残る株が出やすくなります。
他家受粉を選ぶ植物に共通する、生き残りの仕組みのひとつです。

そのため、受粉は虫の動きに大きく頼ります。
蜂やハエ、アブが花のあいだを行き来して、初めて実がなります。
受粉者の活動が悪い年や場所では、結実量が落ちます。
気温が低い、雨が続く、虫が少ない。
そうした条件で、収量が変わります。
そば畑に養蜂家が巣箱を置く例もあります。
蜂は蜜を集め、そばは受粉してもらう、互いに利のある関係です。

一方、韃靼そばは、自分の花粉で実をつけられます。
花も小さく、あまり大きく開かない。
自家受粉が成立する作りになっていて、虫の動きに頼らずに結実します。
高地や寒冷地で、虫の活動が限られる場所では、自家受粉できることが利になります。
多様性を確保するより、確実に実をつけることを優先した方向です。

受粉のしかたは、花の段階の話です。
ただ、その違いは、育つ場所と、収量の安定性に響いてきます。
受粉者の活動に頼る「普通そば」と、自分で受粉できる韃靼そば。
同じ「そば」と呼ばれるなかに、結実までの道筋が、二つあります。

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