十割と二八

十割と二八

「十割」は、小麦粉を使わず、そば粉だけで打ったそばを指す言葉です。

多くのそばには、つなぎとして小麦粉が使われてきました。
「二八」は、そば粉八・小麦粉二の比率を表します。
配合にはほかにも七三や九一などがありますが、二八は代表的なものとして知られています。

なぜ小麦粉を加えるのか。

小麦粉には、水を加えてこねると粘りを生む「グルテン」というたんぱく質が含まれています。
そば粉にはこれがありません。
水を加えても生地がまとまりにくく、粉に水を均等に行き渡らせる「水回し」の工程でも、そば粉だけでは水の入り方にムラが出やすい。

小麦粉が入ると、生地がまとまり、麺として細く長く伸ばせるようになります。
茹でる途中で切れにくく、噛むとコシが出ます。

小麦粉は、作りやすさと食感の両方を生み出すための工夫として加えられてきました。

現代では、そばは小麦粉よりも高価な食材と見られています。
そのため「二八」は、そば粉を減らしてコストを下げるための配合だと受け取られることもあります。
しかし、江戸時代には小麦粉のほうが高価だった時期もあります。
価格の関係は、時代によって入れ替わってきました。

では、作りやすさもコシも小麦粉でまかなえるなら、十割にはどんな意味があるのか。

十割は、そば粉だけで打つぶん、そば粉の成分がそのまま麺に残ります。
たんぱく質やルチンも、小麦粉で薄まることなく残る。
茹で汁も、そば湯として成分ごと飲みきることができます。

食感のうえでも、小麦粉のグルテンが生む弾力とは違う、そば粉のデンプンが熱で結びついた歯切れのよさが出ます。

機能を足す二八と、素材を残す十割。
両方の作り方が、そばとして受け継がれてきました。

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