二つの道

二つの道

そばは、日本特有の食べ物だと思われることがあります。
けれど、そば粉を使った食べ物は、世界各地にあります。

フランスのブルターニュ地方には、そば粉を薄く焼いた「ガレット」があります。
伝統的には、そば粉と水と塩だけで作られてきました。
地域や作り手によっては、卵や小麦粉、牛乳を加える作り方もあります。
加える量が増えるほど、生地は破れにくくなります。

ロシアには、そば粉に小麦粉や卵、牛乳を混ぜて焼く「ブリヌイ」というパンケーキがあり、いくらや燻製魚をのせて食べます。
ロシアは、そばの消費量が世界でもっとも多い国のひとつです。
実を炒って炊いた「カーシャ」という料理も、家庭料理の定番として食べられています。

カーシャは、米のように、粒の形を保ったまま炊きあがる料理ではありません。
米は、炊いても一粒一粒の形が残り、そのまま食べることも、寿司やチャーハンに作り変えることもできます。
そばの実は、殻を除いて炒っても、粒の形を保ったままでは炊きあがらず、崩れた状態の粥になります。
形を保ったまま食べるための、素の状態というものが、そばの実には見当たりません。

形を保った状態で食べるには、崩れる前に、粉にしてまとめ直す必要があります。
イタリアのヴァルテッリーナ地方には、そば粉のパスタ「ピッツォッケリ」があります。
そば粉と小麦粉を、八対二の割合で混ぜて作られるのが目安です。
そば粉だけでは生地がまとまらず、茹でると崩れてしまうため、小麦粉と合わせて使われています。
日本の二八そばと、同じ配合の比率です。

遠く離れた土地で、同じ材料が、同じ壁につきあたっています。
そば粉だけでは足りないという結論と、たどり着いた比率が、よく似ているのです。
申し合わせたわけではない場所どうしで、同じ答えに行き着いています。
そばが根づいてきた土地では、崩れることを受け入れて粥にするか、崩れる前に粉にしてまとめ直すか。
選び方は、この二つの道に分かれています。

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