そばの根

そばの根

そばは、痩せた土地でも育つと、これまで何度か書いてきました。
その理由のひとつは、地上に見える茎や葉ではなく、土のなかの根にあります。

痩せた土地というと、養分そのものが少ない土地だと思われがちです。
けれど、土のなかのリン酸は、カルシウムや鉄、アルミニウムと結びつき、植物が吸収できない形になっていることがよくあります。
量としては土のなかにあっても、根が取り込める形になっていない、という状態です。
日本の畑に広く分布する黒ボク土は、その典型です。
火山灰に由来するアルミニウムを多く含み、リン酸を強く固定するため、植物にとって利用できるリン酸が不足しやすい土壌です。
多くの作物は、この状態のリン酸をそのままでは利用できません。

そばの根は、水素イオンを放出して、カルシウムと結びついたリン酸(アパタイトなど)を溶かし出す性質を持っています。
似たような戦略は、そば以外の植物にも見られます。
マメ科のルーピンは、根からクエン酸を出して、同じように難溶性のリン酸を溶かして利用します。
使う物質は違っても、土に固定された養分を自力で引き出すという方向は、共通しています。

酸性の土壌では、アルミニウムが溶け出しやすく、根にとって害になります。
そばは、根からシュウ酸を分泌し、周囲のアルミニウムと結びつけて無毒化する性質を持っています。
それでも吸収されてしまったアルミニウムは、葉の細胞のなかに閉じ込め、生育への影響を抑えています。
根で防ぎ、葉で閉じ込めるという、二段構えの仕組みです。

痩せた土地で育つというと、少ない養分で我慢しているようにも思えます。
けれど、そばがしていることは少し違います。
そのままでは使えない養分を使える形にし、害になるものからは身を守る。
そばが痩せた土地でも育つ理由のひとつは、目には見えない、こうした根のはたらきにあります。

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